ニュース / 通算発電量 百万kw時に 秩父市の木質バイオマス施設
- 配信日 2012年8月31日
- 埼玉県秩父市が運営している木質バイオマス発電所の通算発電量が今月二十二日、百万キロワット時を達成した。国内初の実用機として二〇〇六年十二月に試運転を始め、約五年八カ月で到達した。地元の森林の間伐材を活用する自然エネルギーとして注目され、発電の安定性などで実績を積み上げているが、コスト面など解決すべき課題もある。
バイオマス発電所は、観光宿泊施設「吉田元気村」(秩父市上吉田)内にある。燃料は、未利用の間伐材を砕いたチップ(木質チップ)。チップを蒸し焼きにして発生したガスで発電機を回し、電気を生み出す。
発電効率は木質チップの形や水の含有量によっても異なる。市はスギやヒノキの間伐材を原料としているが、スギのみを使う秋田県の発電施設より効率が良いという。スギのみの比較でも秋田より水分量が少ないため、発電には適している。
「百万キロワット時」達成の累計運転時間は一万四千百五十七時間。木質チップは計二千三十六トンが使われた。一般的な火力発電に比べ、二酸化炭素の排出量を五百二十トン少なくできた。
発電所は吉田元気村の施設に電力を供給し、余剰分を東京電力に販売している。一一年度の実績では、発電した二十二万四千キロワット時のうち、21・4%に当たる四万八千キロワット時を売電した。
発電所は研究施設としての側面もあり、現在はより安定して稼働させることを最優先にする。一一年度の総運転時間は三千百九十一時間で、前年度比で四百三時間増。市は「運転時間は年々伸び、安定性は高まっている」とし、年間三千六百時間を目標にする。
一方、コスト面の課題は手付かずだ。発電所の運転に関わる年間費用は、県が全額補助する人件費を除き、一一年度実績で千百七十二万円。市はコスト削減のため、木質チップの調達費を試験的に引き下げる取り組みをしたこともあるが、現在は中断している。
発電所の主目的は「間伐材の有効利用による森林保護・育成」。市は「コスト減には、運び出しやすい場所から間伐材を持ち出すことが必要だが、森林保護の面からは有益ではない」としており、当面は現状の態勢で運転を続けるという。
東京新聞 2012年8月31日